+ a piece of Works
2年前、たまたま横浜高島屋の催事場で「〜の職人展」だったかイベント名は思い出せないのですが、「職人」という言葉に反応して最上階まで行ってみました。
沢山の職人技の本物を感じる工芸品の一角に彫刻刀のコーナーがありました。
ずっと、ちゃんとしたのを持ちたいと思っていたのですが、数本、木の軸のは持っていて少しずつ、と思ってそのままでした。
この彫刻刀を見たとき、カッコいい!と一目惚れでした。
藤で巻かれた鉄の軸にも、木の軸にないチカラ強さを感じ、これを持っているだけでも職人になれた気分になれそう!と不純な動機も持ち、早速購入しました。
色々な額縁を作っていますが彫りのあるのはまだ多くはなく、まだまだこれから手がけていきたい分野。
彫刻刀は木を選びます。
木によっては削る方向で欠けやすいのもあり、ルーターがそんなときは欠けづらくて便利です。
ですがルーターに出来辛いことはシャープなラインを作ること。
彫刻刀の一刀彫りのような緊張感のある彫りは、よく研いである彫刻刀の真骨頂です。
彫りに関して、経験も浅くまだまだこれからのWAMですが、できない、と言って創作の幅を狭めないで、やってみる!のチャレンジを繰り返すうちにきっと少しづつ身に付いてくると思っています。
もちろん完成した額縁に関しては、これでいい、がないとお渡しするつもりはありませんので、彫りの作品は苦労すると思いますが、時間がかかってもやりきって納得してお渡しするつもりです。
彫ってみると今のでは足りないのを感じ、その後、何本か追加で木軸のを買いましたが、時間はかかりましたが藤巻のをゼロから一本作っていただきました。
今後はできれば藤巻の彫刻刀を増やして行きたいと思います。
藤の部分が数年後、もっと先には飴色に変わっていくと思うのですが、その変化も楽しみです。
大事な大好きな道具です。
河清刃物 http://kawasei.asia/
インスタグラム kawaseihamono
右は完成した額縁の写真です。
倒れないように重く重く、と、厚い集成材を使って作りました。
真っ白な漆喰に少しアイボリーにするために顔料を混ぜて色をつけました。
シンプルな真四角の額縁です。
今回の依頼主様はハッキリとしたイメージは持っておられて、それを作ってもらおう、という感じのスタートでした。
額縁に入れるのはキャビネサイズのお写真。
漆喰をご希望です。
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「 額を想定している写真は子どもの写真です。
成長とともに写真の入れ替えを想定しています。
手焼きする写真のため常に白黒写真になります。」
このご注文メールを読んであたたかい気持ちになりました。
お父さんの写された手焼きの子どもさんのお写真を、成長とともに入れ替えて楽しむための額縁……♡
最初のご希望はオーソドックスな薄い四角い漆喰の額縁でした。
もっと幅広いフレームの方がお写真が映えそうです、とお伝えしたら、置く予定の場所が幅が広くないので2方向を広くしたらいかがでしょうか、というとっても面白いアイデアを、寸法入りのラフを添えて送ってくださいました。
そして縦と横に置き換えられるようにしたら、とのアイデアも。
思ったこともない面白い額縁でした!
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依頼主様は二方向におけるようにとの事でしたが、いっそのこと4方向を楽しめたらいいのでは、とアイデアの追加をさせていただいたり、厚さのご意見などいただき、メールのやり取りで完成した額縁です。
入れる写真によって映える置き方があると、完成してから思いました。
そして真っ白でないアイボリーの真四角の額縁はお花もグリーンもそばに置いたらとっても似合いそうな、スタートからはまったく違ったシンプルな素敵な額縁が完成しました。
結構重さがありますし少し奥深いので、普通は入れっぱなしの多いフォトフレームよりずっと取り替える頻度の高い額縁としてこれから活躍してくれそうですので、依頼主様が置いたまま簡単に入れ替えできるように工夫をしました。
幸せな額縁ですね!
2014年11月、絵画教室で知り合った友人とお互い初めての二人展をしました。
横浜の山手111番館のギャラリーは抽選会があります。私はどうしても出席できず友人が参加いたしました。
彼女は見事に一番くじを引き、11月の好きな週を選ぶことができました。
二人展のタイトルは
「土 × spirit 」- 土と漆喰による額と彩画の二人展 -
いざ友人の描いた絵に額装となったとき、どうしても普通の額縁が友人の絵に似合わない気がして、その時初めて漆喰の額縁と「 土 」という素材を使って額装を手がけてみることにしたのですが、このころは木の額縁も経験少なく未熟でしたが、さらに漆喰や土は、まったくのど素人。
いつもイメージが先にきて、さて、どう作ろうか、というパターンがよくあります。
新しいことへのチャレンジは、失敗したら、との思いもありますがどうにもやってみたくなってしまうんです。
よく言われていますが「やらないよりやった後悔」の方が、きっと何倍も清々しい。
そう思って飛び込むWAMです。
幸いに今はネットで色々な情報を手に入れることができますから、それから調べて取り寄せて、チャレンジ、の日々でした。
白いお城は漆喰そのものですが、ひび割れたほかの作品は漆喰ではなく「土 」です。
左官の本を何冊か購入しました。
そこに土壁を作る材料として載っていた生石灰。
生石灰はお菓子や乾物などの乾燥剤として一緒に袋に入っていますが、強アルカリですので園芸では寒い時期に庭の土と混ぜて殺菌、消毒に使われています。
そこでよく書かれていますのが「水に触れさせると発熱します 」との注意書き。
狭い作業部屋で生石灰は発熱…………湯気も出てきて、お菓子の袋に書いてある「発熱」の体験ができましたが、どれくらいの温度になるのか緊張した記憶があります。
その発熱した生石灰と、土を混ぜて、そこに「スサ」と呼ばれる藁や麻の細かく刻んであるのも混ぜ込んで、小さな金属のボールの中で土壁の材料を作ることができました。
土壁の配合は季節によって変える繊細な世界のようですので、もちろんプロの方たちからみたらひどいものですが、今、もう一回、と言われてもあの時と同じようにはできないであろう勢いがあったな〜〜と思う4年前 …………
土壁素材は額装にももちろん使いましたが、小さなオブジェとしていくつかの色土と混ぜて、山手の洋館のおしゃれな窓辺で暗くなってきたらライティングもして飾ってみました。
右下にすこし見える立てかけてある大きな作品は、フレーム部分は土で中の部分は漆喰の表情だけで完成させました。その大きなパネルも今は作業部屋に。
左上に少し見えるのはドライフラワーを飾れる作品。
家にある聖水入れを石膏で型取りをして、土と漆喰で作りました。
いい感じのひび割れも予想外でしたが、初チャレンジの二人展の勢いと、友人と私のスタートだったな〜と思える感慨深い作品として、今は作業部屋の壁に飾っています。
二人展の時の作品は、少しずつ創作日記でご紹介していきたいと思っています。
3月はWAMの額縁を数点使って展示してくださる作家様の個展が3カ所で開催されますが、昨日は三鷹と西荻窪に行って参りました。
初めてのギャラリーの訪問です。
どんな雰囲気のギャラリーかとても楽しみに駅から歩きましたが、途中途中足を止めたくなるお店がたくさんで、さすが西荻窪と思いながらおしゃれな雑貨のお店を曲がると、ホームページで拝見した樹木に覆われたギャラリー「寿庵」さんの丸窓が見えました。
丸窓からは作家様とお客様の姿も見えます。
樹木に囲まれ、落ち着いた木のドアのガラス越しに作家様に会釈。そしてそのドアをそっと開けて、静かにご挨拶して作品を拝見させていただきました。
入ってすぐ右手にハガキのワンちゃんの作品がかけてあり、思ったよりも大きくてインパクトがある作品でした。
あの作品の「目」はハガキで拝見した時から、心に残りましたが、なんとも寂しく奥底が揺さぶられる好きな作品です。
以前観させていただいた心が荒れた子猫の作品の目も印象的で、近づくと引っ掻かれそうなキリキリと悲しい感情を目から感じる作品でした
そして今回のワンちゃんの目は、もう心に収まってしまって表だっては落ち着きのあるように見えながら、でも、心の奥に残るなんともいえない排他的な寂しさを感じます。
明るくて元気な絵もパワーをもらえそうでいいけれど、こういった作品が家に飾ってあったら、寂しい時…悲しい時…エトセトラ…そんな感情に寄り添ってくれる優しいコーナーになりそうです。
色々な感情の目を描ける感性には羨ましくもあり心も打たれます。
残念ながら、決して体験することのできない作家様の心の奥の奥にある世界を、作品を通して外から「感じる」ことが私に唯一出来ること……
そのためには、曇りのない嘘いつわりのない心を準備しておかなくては、と思うWAMでした。
まだ会期中です。
3月10日まで開催しております。
ぜひご覧いただきたく存じます。
ギャラリー「寿庵」ホームページ http://www.iseyajuan.com/
(間違ったホームページをNewsで載せていましたので、3/7に訂正させていただきました)